建設労働者の雇用の改善等に関する法律
昭和51年 法律第33号
受講者の皆様へ
この法律は、下記の建設業29業種に適用され、法第5条では事業所ごとに雇用管理責任者の選任義務と、必要な研修を努力義務とし、第7条では労働条件通知書の交付義務を定めています。
この法律は、昭和51年施行以来今日まで雇用管理の近代化に大きな役割を果たしてきたことは周知の通りですが、建設業においては、いまだに遵法意識と法の理解が低いために、違反事件や法定基準を下回る事例が数多く見受けられます。
なにも労働法規を守ることだけが雇用管理のすべてではありませんが、建設業においては、なにはさておき法の遵守こそが雇用管理のスタートであるといっても過言ではないでしょう。
適用される建設業29業種は次の通りです。
土木工事業、建設工事業、大工工事業、左官工事業、とび・土工工事業、石工事業、屋根工事業、電気工事業、管工事業、タイル・れんが・ブロック工事業、鋼構造物工事業、鉄筋工事業、ほ装工事業、しゅんせつ工事業、板金工事業、ガラス工事業、塗装工事業、防水工事業、熱絶縁工事業、電気通信工事業、造園工事業、さく井工事業、水道施設工事業、消防施設工事業、清掃施設工事業、内装仕上工事業、機械器具設置工事業、建具工事業、解体工事業
平成19年度改正のポイント
1 事業主団体の作成する実施計画の認定
事業主団体は、建設業務労働者の雇用の改善等の措置と建設業務有料職業紹介事業又は建設業務労働者就業機会確保事業に関する措置を一体的に行うための実施計画を作成し、これを厚生労働大臣に提出して、その実施計画が適当である旨の認定を受けることができるのものとすること。
2 建設業務有料職業紹介事業の創設
建設業務有料職業紹介事業を創設し、実施計画の認定を受けた事業主団体が厚生労働大臣の認可を受けて、構成事業主を求人者とし、又は構成事業主若しくは構成事業主に常時雇用される労働者を求職者とする建設業務の有料職業紹介事業を実施することを可能とすること。
3 建設業務労働者就業機会確保事業の創設
建設業務労働者就業機会確保事業を創設し、実施計画の認定を受けた事業主団体の構成事業主が厚生労働大臣の認可を受けて、自己の常時雇用する労働者を他の構成事業主の下で就業させることを可能とすること。
【建設労働者の雇用の改善等に関する法律】
昭和51年 法律第33条
昭和51年5月27日 第717回通常国会 三木内閣
建設労働者の雇用の改善等に関する法律をここに公布する。
目 的
第1条
- この法律は、建設労働者の雇用の改善、能力の開発及び向上並びに福祉の増進を図るための措置並びに建設業務有料職業紹介事業及び建設業務労働者就業機会確保事業の適正な運営の確保を図るための措置を講ずることにより、建設業務に必要な労働力の確保に資するとともに、建設労働者の雇用の安定を図ることを目的とする。
定 義
第2条
- この法律において「建設業務」とは、土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体の作業又はこれらの作業の準備の作業に係る業務をいう。
- この法律において「建設業務労働者」とは、建設業務に主として従事する労働者をいう。
- この法律において「建設事業」とは、建設業務を行う事業(国又は地方公共団体の直営事業を除く。)をいう。
- この法律において「建設労働者」とは、建設事業に従事する労働者をいう。
- この法律において「事業主」とは、建設労働者を雇用して建設事業を行う者をいう。
- この法律において「事業主団体」とは、事業主を直接又は間接の構成員(以下「構成員」という。)とする団体又はその連合団体(法人でない団体にあっては、代表者又は管理人の定めのあるものに限る。)であって、厚生労働省令で定めるものをいう。
- この法律において「建設業務職業紹介」とは、事業主団体が、当該事業主団体の構成員を求人者とし、又は当該事業主団体の構成員若しくは構成員に常時雇用されている者を求職者とし、求人及び求職の申込みを受け、求人者と求職者との間における建設業務に就く職業に係る雇用関係(期間の定めのない労働契約に係るものに限る。)の成立をあっせんすることをいう。
- この法律において「建設業務有料職業紹介事業」とは、有料の建設業務職業紹介(建設業務職業紹介に関し、いかなる名義でもその手数料又は報酬を受けないで行う建設業務職業紹介以外の建設業務職業紹介をいう。)を業として行うことをいう。
- この法律において「建設業務労働者の就業機会確保」とは、事業主が、自己の常時雇用する建設業務労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他の事業主の指揮命令を受けて、当該他の事業主のために建設業務に従事させることをいい、当該他の事業主に対し当該建設業務労働者を当該他の事業主に雇用させることを約してするものを含まないものとする。
- この法律において「建設業務労働者就業機会確保事業」とは、建設業務労働者の就業機会確保を業として行うことをいう。
- この法律において「送出労働者」とは、事業主が常時雇用する建設業務労働者であって、建設業務労働者の就業機会確保の対象となるものをいう。
建設雇用改善計画の策定
第3条
- 厚生労働大臣は、建設労働者(船員職業安定法(昭和23年法第130号)第6条第1項に規定する船員を除く。第9条及び第10条を除き、以下同じ。)の雇用の改善、能力の開発及び向上並びに福祉の増進に関する重要事項並びに建設業務有料職業紹介事業及び建設業務労働者就業機会確保事業の適正な運営の確保に関する重要事項を定めた計画(以下「建設雇用改善計画」という。)を策定するものとする。
- 建設雇用改善計画に定める事項は、次のとおりとする。
- 建設労働者の雇用の動向に関する事項
- 建設労働者に係る雇用状態の改善並びにその能力の開発及び向上を図るために講じようとする施策の基本となるべき事項
- 建設労働者の福祉の増進を図るために講じようとする施策の基本となるべき事項
- 建設業務有料職業紹介事業及び建設業務労働者就業機会確保事業の適正な運営の確保を図るために講じようとする施策の基本となるべき事項。
- 厚生労働大臣は、建設雇用改善計画を策定する場合には、あらかじめ、関係行政機関の長と協議するとともに、労働政策審議会の意見を聴くものとする。
- 厚生労働大臣は、建設雇用改善計画を策定したときは、遅滞なく、その概要を公表しなければならない。
- 前二項の規定は、建設雇用改善計画の変更について準用する。
勧告等
第4条
- 厚生労働大臣は、建設雇用改善計画の円滑な実施のため必要があると認めるときは、事業主、事業主の団体その他の関係者に対し、建設労働者の雇用の改善、能力の開発及び向上並びに福祉の増進に関する事項について必要な勧告又は要請をすることができる。
雇用管理責任者
第5条
- 事業主は、建設事業(建設労働者を雇用して行うものに限る。第8条において同じ。)を行う事業所ごとに、次に掲げる事項のうち当該事業所において処理すべき事項を管理させるため、雇用管理責任者を選任しなければならない。
- 建設労働者の募集、雇入れ及び配置に関すること。
- 建設労働者の技能の向上に関すること。
- 建設労働者の職業生活上の環境の整備に関すること。
- 前三号に掲げるもののほか、建設労働者に係る雇用管理に関する事項で厚生労働省令で定めるもの
- 事業主は、雇用管理責任者を選任したときは、当該雇用管理責任者の氏名を当該事業所に掲示する等により当該事業所の建設労働者に周知させるように努めなければならない。
- 事業主は、雇用管理責任者について、必要な研修を受けさせる等第1項各号に掲げる事項を管理するための知識の習得及び向上を図るように努めなければならない。
募集に関する事項の届出
第6条
- 事業主は、新聞、雑誌その他の刊行物に掲載する広告、文書の掲出又は頒布その他厚生労働省令で定める方法以外の方法により建設労働者の募集を行う場合において、その被用者に建設労働者を募集させようとするときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該被用者の氏名その他建設労働者の募集に関する事項で厚生労働省令で定めるものを公共職業安定所長に届け出なければならない。ただし、建設労働者の募集の適正化を図るため特に必要があると認められる区域として厚生労働省令で定める区域以外の区域において建設労働者を募集させる場合は、この限りでない。
雇用に関する文書の交付
第7条
- 事業主は、建設労働者を雇い入れたときは、速やかに、当該建設労働者に対して、当該事業主の氏名又は名称、その雇入れに係る事業所の名称及び所在地、雇用期間並びに従事すべき業務の内容を明らかにした文書を交付しなければならない。
書類の備付け等
第8条
- 一の場所において行う建設事業の仕事(以下この条において「建設工事」という。)の一部を請負人に請け負わせている事業主(当該建設工事の一部を請け負わせる契約が二以上あるため、その者が二以上あることとなるときは、当該請負契約のうち最も先次の請負契約における注文者とする。以下この条において「元方事業主」という。)は、当該建設工事について、その請負人(当該建設工事が数次の請負契約によって行われるときは、当該請負人の請負契約の後次のすべての請負契約の当事者である請負人を含むものとし、当該建設工事につき常態として建設労働者を雇用する請負人に限る。以下この条において「関係請負人」という。)ごとに、その氏名又は名称、その雇用する建設労働者を当該建設工事に従事させようとする期間及びその選任に係る雇用管理責任者の氏名を明らかにした書類を、厚生労働省令で定めるところにより、当該建設工事に係る事業所に備えて置かなければならない。ただし、当該建設工事に係る事業所において元方事業主及び関係請負人が雇用する建設労働者の数が厚生労働省令で定める数未満である場合は、この限りでない。
- 元方事業主は、関係請負人に対して、第5条第1項に規定する事項の適正な管理に関し助言、指導その他の援助を行うように努めなければならない。
建設労働者の雇用の安定等に関する事業
第9条
- 政府は、建設労働者(雇用保険法(昭和49年法律第116号)第62条第1項に規定する被保険者等に該当するものに限る。以下この条及び次条において同じ。)の雇用の安定並びに能力の開発及び向上を図るため、同法第62条の雇用安定事業又は同法第63条の能力開発事業として、次の事業を行うことができる。
- 事業主、事業主の団体又はその連合団体(以下この項において「事業主等」という。)に対して、建設労働者の雇用の改善、再就職の促進その他建設労働者の雇用の安定を図るために必要な助成を行うこと。
- 事業主等に対して、建設労働者の技能の向上を推進するために必要な助成を行うこと。
- 第14条第1項に規定する認定団体に対して、第43条第2号に規定する送出就業の作業環境に適応させるための訓練の促進並びに建設業務労働者の就職及び送出就業の円滑化を図るために必要な助成を行うこと。
建設労働者の雇用の改善等に関する法律の施行について
(昭和51年9月7日) (職発第409号) (各都道府県知事あて労働省職業安定局長通達)
第3 建設労働者に係る雇用管理の改善のための措置 (法第5条から第8条まで関係)
1 雇用管理責任者の設置(法第5条関係)
(1) 性格
雇用管理責任者は、各企業の内部において、建設労働者に係る雇用管理に関する事項を管理させるために、事業主が選任するものであること。また、法令上事業主に義務づけられている雇用管理に関する事項についての責任が雇用管理責任者に移行するというものではないこと。
(2) 選任
イ 選任の単位
雇用管理責任者は、建設事業を行う「事業所」ごとに選任しなければならないこと(第一項)。
ロ 選任の方法
雇用管理責任者の選任の方法については、法令上特に規定されておらず辞令交付による任命、口頭による任命等その方法は事業主に任されていること。
ハ 資格
雇用管理責任者の資格については、法令上特に規定されていないが、適正な雇用管理の実効を期するため、たとえば社会保険労務士など労働に関する資格を有する者や雇用管理について相当の実務経験を有する者などが望ましいものであること。
ニ 小規模事業主の場合
特に小規模な企業において、事業主又はその代表者が自ら建設労働者の雇用管理を行うことができる場合は、自ら雇用管理責任者としてその職務を行うこととして差し支えないこと。
(3) 職務
イ 建設労働者の募集、雇入れ及び配置に関すること(第1項第1号)。
- 法第6条の規定による募集に関する事項の届出、職能安定法第35条ただし書の規定による文書同法第36条の規定による直接募集の許可の申請、公共職業安定所に対する求人の申込み、募集の通報、募集活動等建設労働者の募集に関すること。
- 法第7条の規定による雇用に関する文書の交付、労働基準法第15条第1項の規定による労働条件の明示等建設労働者の雇入れに関すること。
- 職業適性検査、職場適応訓練の実施、配置転換等建設労働者の配置に関すること。
ロ 建設労働者の技能の向上に関すること(第1項第2号)。
- 技能実習その他の職業訓練の実施
- 職業訓練又は技能検定への建設労働者の派遣
- その他建設労働者の技能の向上に関すること。
ハ 建設労働者の職業生活上の環境の整備に関すること(第1項第3号)。
- 作業員宿舎等現場福祉施設の管理運営
- その他建設労働者の職業生活上の環境の整備に関すること。
ニ 労働者名簿及び賃金台帳に関すること(則第1条第1号)。
- 労働基準法第107条の規定による労働者名簿の調製及び記入
- 同法第108条の規定による賃金台帳の調整及び記入
ホ 労働者災害補償保険、雇用保険及び中小企業退職金共済制度その他建設労働者の福利厚生に関すること(則第1条第2号)。
- 労働者災害補償保険及び雇用保険に係る手続きに関すること。
- 中小企業退職金共済法の規定による特定業種(建設業)退職金共済契約に係る手続に関すること。
- 健康保険、厚生年金保険その他の社会保険に係る手続に関すること。
- レクリエーションの実施、建設労働者の相談に応ずることその他建設労働者の福利厚生に関すること。