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雇用管理責任者 必須研修誌上セミナー
=雇用管理責任者の内容=


Q

当社は建設業を営んでおりますが、建設業の事業主は建設事業を行う事業場ごとに雇用管理責任者を選任して、建設労働者の雇用管理をさせなければならないことになっていると聞きました。雇用管理責任者とは、どういったものなのでしょうか、詳しい内容をお教え下さい。

A

あなたがお聞きの通り、建設労働者の雇用の改善等に関する法律により、建設業の事業主は建設事業を行う事業場ごとに、雇用管理責任者を選任し、建設労働者の雇用管理をさせなければならないことになっております。

次に詳しく説明することにしましょう。

「建設事業」「建設労働者」「事業主」

まず、この法律で「建設事業」とは、土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体又はその準備の事業を言います。これは、いわゆる土木建築事業であり、労働基準法別表第1第3号に該当する事業及び労働保険の保険料の徴収等に関する法律第12条第4項第3号に掲げる事業と同じも のです。

「建設労働者」とは、前記の建設事業に従事する労働者を言います。したがって、ある事業が建設事業であると認められるときは、その建設事業に従事する限り、事務職員等いわゆる現場労働者でない労働者も、この法律における建設労働者ということになりますので注意が必要です。

「事業主」とは、建設労働者を雇用しての建設事業を行う者を言います。したがって、建設労働者を1人も雇用しないで自ら建設事業を行ういわゆる1人親方は、この法律における事業主とはなりません。

雇用管理責任者の選任

最初に説明しましたように事業主は、建設事業を行う事業場ごとに、雇用管理責任者を選任し、建設労働者の雇用管理をさせなければなりませんが、これは、いわゆる建設現場において、建設労働者の雇用管理を行う雇用管理責任者を置かせることにより、その現場における雇用管理の適正化を図ろうとするものです。

ところで、雇用管理責任者を選任しなければならない単位の「事業場」とは、どういうものなのかが問題となりますが、これは一定の場所において、一定の組織の下に有機的に相関連して行われる一体的な経営活動である「事業」を場所的、施設的な面においてとらえた概念であり、結局のところ、労働基準法の規定により労働者名簿及び賃金台帳を調整しなければならないとされている単位の「事業場」と同一のものということになります。

具体的には、建設現場に事務所等を設置し、その現場で働く建設労働者の労働時間、賃金等の雇用管理をその事務所等で行っている場合は、通例、その建設現場が独立した1つ事業場となります。また建設現場が1の事業場という程度の独立性を持たず、そこで働く建設労働者の雇用管理を直近上位の支店又は出張所等で包括して行っているような場合は、その建設現場及びその支店又は出張所等を包括したものが1の事業場となり、その支店又は出張所等に、雇用管理責任者を置けばよいこととなります。

なお、特に零細な企業等において、事業主が建設現場で働く建設労働者の雇用管理を自ら行うことができる場合には、自ら雇用管理責任者としてその職務を行っても差し支えありません。雇用管理責任者の資格については、法律上特に必要とされていませんが、建設労働者の雇用管理について責任を持つという性格から、例えば、労務課長、現場事業所長等企業内においてある程度の地位にある者であって、雇用管理に関する相当の実務経験を有する者が望ましいということになりましょう。

雇用管理責任者の職務

事業主が雇用管理責任者に管理させなければならない事項は、次の事項のうち、法律上あるいは企業経営上その事業場において処理すべきこととされている事項です。

  1. 建設労働者の募集、雇入れ及び配置に関すること。
  2. 建設労働者の技術の向上に関すること。
  3. 建設労働者の職業生活上の環境の整備に関すること。
  4. 労働者名簿及び賃金台帳に関すること。
  5. 労災保険、雇用保険及び中小企業退職金共済制度その他建設労働者の福利厚生に関すること。

なお、「管理する」ということは、これらの事項が適正に処理されることについて責任を持って管理するという意味であって、必ずしも、これらの事項を自ら処理しなければならないということではありません。

建設労働者に対する周知

事業主は、雇用管理責任者を選任した時は、その氏名を、その事業場で働く建設労働者に周知させるように努めなければならないものとされております。

その方法としては、法律に例示されているように、事業場に掲示する方法のほか、建設労働者に雇用管理責任者の氏名を記載した文書を交付する、雇用管理責任者にその氏名及び事業主名を記載した腕章等を着けさせるなどの方法が考えられます。

雇用管理責任者の資質の向上

 事業主は、雇用管理責任者について、必要な研修を受けさせる等雇用管理を行うための知識の習得及び向上を図るように努めなければならないものとされております。

(根拠法令)
建設労働者の雇用の改善等に関する法律
第2条、第5条 同施行規則第1条