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お知らせ 2023.02.20

割増賃金の改正

 中小企業を対象に1か月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられる法改正の具体的内容や法改正に至った背景、引き上げ後の割増賃金の計算方法についてそれぞれ解説します。

 法改正の内容
 2019年に施行された「働き方改革関連法」によって、この猶予措置が廃止され2023年4月1日から、中小企業にも「月60時間以上の時間外労働について割増率50%以上の割増賃金を支払う」義務が生じます。


 引用:厚生労働省|2023年4月1日から月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます
 自社の労使協定により、例えば55%や60%など、50%よりも多く割増賃金率を設定することも可能です。

 割増賃金について詳しくは人事・労務の注目用語「割増賃金」をご覧ください。
 
 今回の割増賃金率変更の対象は中小企業ですが、法律が規定する中小企業の条件に該当するかどうかは、以下の表を見て判断しましょう。

 業種 ①資本金の額または出資の総額 ②常時使用する労働者
小売業 5,000万円以下 50人以下
 サービス業 5,000万円以下 100人以下
 卸売業 1億円以下 100人以下
 上記以外のその他の業種 3億円以下 300人以下
引用:厚生労働省|2023年4月1日から月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます
 なお、60時間を超えている、いないに関わらず月45時間超の時間外労働を従業員にさせるには特別条項付きの36協定の締結が必要です。特別条項の締結なしに月60時間の残業をさせた場合、割増賃金率50%以上の割増賃金を支払っていたとしても労働基準法違反となります。

 中小企業の割増賃金率が引き上げられた背景
 大企業は労働基準法改正により、2010年から1か月60時間を超えて時間外労働をさせた場合の割増賃金率が50%以上に設定されていました。この時、中小企業の割増賃金率は25%以上のまま据え置かれ、引き上げまでに猶予期間が設けられていたという背景があります。この猶予期間が廃止されることになったのは2019年に施行された「働き方改革関連法」による決定です。これにより、2023年4月1日から、中小企業にも「月60時間以上の時間外労働について割増率50%以上の割増賃金を支払う」義務が生じました。

 割増賃金率50%への引き上げは、企業の長時間にわたる時間外労働を抑制することが目的です。特に月60時間超の時間外労働が多い中小企業では従来と同じ働き方を続けると残業代がかさむため、長時間労働を減らす取り組みの実施が必要になります。

 割増賃金率引き上げ後の時間外労働の計算方法
 2023年4月1日からの割増賃金引き上げ後は、1か月の起算日からの時間外労働時間数を累計して60時間を超えた時点から50%以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません。以下の条件での時間外労働の計算を考えてみましょう。

<割増賃金率引き上げ後の時間外労働の条件>

・1か月の起算日は毎月1日

・時間外労働の割増賃金率

 60時間以下・・・25%  60時間超・・・・・50%

・深夜残業/休日労働はない  

 1か月のうちの1日~23日(日曜日は3回、勤務したのは20日)までの時間外労働時間が60時間…割増率25%                                    24日~31日(日曜日は1回で、勤務したのは6日)が20時間の場合…割増率50%

この条件で、1時間当たりの賃金が2,000円だとすると、次の計算で残業代を求めます。

60(時間)×1.25×2,000円=150,000円  20(時間)×1.50×2,000=60,000円  60,000円+150,000円=210,000円