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お知らせ 2018.05.21

建設業務労働者は派遣禁止

 労働者派遣法第4条 何人も、次の各号のいずれかに該当する業務について、労働者派遣事業を行ってはならない。
 2号 建設業務(土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体の作業又はこれらの作業の準備の作業に係る業務をいう。)
 
 派遣と請負の区別基準
「複数の建設業者で協力して、それぞれが従業員を工事現場に赴かせる」「他社の要請に応じて、従業員を工事の手伝いに行かせる」建設業者にとってよくあることです。
 なぜ建設業務の派遣は禁止されているのか、その理由について解説します。
建設雇用改善法について
「現実に重層的な下請関係のもとに業務処理が行われるなかで、建設労働者の雇用の改善等に関する法律により、 労働者を雇用する者と指揮命令する者が一致する請負という形態となるよう雇用関係の明確化、 雇用管理の近代化等の雇用改善を図るための措置が講じられており、労働者派遣事業という新たな労働力需給調整システムを導入することは、建設労働者の雇用改善を図る上で、かえって悪影響を及ぼすこととなり適当 重層的な下請関係のもとでの業務
 通常の建設工事は、発注者からの注文に基づいて個別の建造物を造り完成品を引き渡す形態をとります。いわゆる個別受注請負の業種です。
 各工事の建造物は、構造も規模も1回ごとに異なるうえに、大工工事、左官工事や電気工事など多種多様な工事の組み合わせで完成するものが多いです。それらの専門技術者を1社だけで賄うことは大変です。
 そこで、注文を受けた業者は、基礎工事・足場工事・電気工事など工事の種類ごとに専門業者に仕事を振り分けて(下請して)、複数の業者による共同作業で建造物を完成させることがあります。規模が大きい場合や、高度な専門技術を要する場合には、下請業者がさらに別の業者に下請(二次下請・三次下請)をすることもあります。
 このように建設業務は、専門化・分業化した複数の企業が共同作業で1つの工事を完成させる、重層的な下請関係の常態化していることが特徴です。
 これは、工事の種類・規模に応じて柔軟に対応できるのでコストを抑えられ、複雑化・専門化する工事について専門分業化することで効率的・効果的に工事を行えるメリットがあります。
一方で、複数の企業が混在することで、工事の遂行や指揮命令の責任者が誰なのか曖昧になるというデメリットがあります。特に建設工事の現場では、労働災害の危険性が高く、曖昧な指揮系統が事故を招くおそれもあります。

 労働力需要の不安定性
 建設工事は工場のように固定した場所で行われるわけではなく、発注を受けた現場を転々とすることになります。工事期間も様々であり、1年を超える工事も珍しくありません。屋外で行われる工事も多いため、季節や天候、地形条件の影響によって工事の予測が乱れ、いつ、どこで、どのくらい労働力が必要かを正確に予測することは困難です。
 さらに、工事があれば人手が必要になりますが、工事が終われば不要になるという受注生産における需要の波も拍車をかけて、建設労働者は雇用が不安定になりがちです。
 いつクビを切られるか分からない職場に行きたいと思う人材は居ないでしょうから、結果として企業が優秀な人材を確保することも困難になり、建設産業全体が衰退してしまいます。
 
 上記の理由から、建設業においては、労働者と使用者の雇用関係(誰が責任を持つのか、誰が指揮命令するのか)を明確にして、安心して長く働ける環境を確保する必要性があります。
 派遣は、雇用主とは別の事業主の指揮命令下に入って働く(給料を払う雇用主と業務の指揮命令をする者が別れる)ものです。ただでさえ重層的な下請関係で責任が曖昧になりやすい状態で、派遣を許すと誰の責任の下で働くのかさらに曖昧になってしまいます。
 また「派遣切り」という言葉があるように、有期雇用の派遣社員の地位は不安定になりがちです。
 そのため、建設業務については派遣を禁止しているのです。

 建設雇用改善法について
 建設業においては派遣を禁止している代わりに「建設労働者の雇用の改善等に関する法律」による有料職業紹介事業(建設労働者の有料あっせん事業)や、就業事業確保事業(建設労働者の送出・受入)があります。
雇用の明確化・安定化を図りつつ、建設労働者の円滑な再就職や、一時的な労働者の過不足の解消ができるようにしている独自の制度です。
 通常の労働者派遣業であれば一般の企業でも可能ですが、上記の事業は一企業ではなく、厚生労働省の許可を得た認定団体及びその構成員しか行うことができません。
 このように建設業の特徴に合わせた独自の制度があるために、建設業務の派遣事業は禁止されているのです。
 では、この厚生労働省の許可を得た認定団体、及びその構成員を派遣してもらう場合は?
 厚生労働省「建設・港湾労働対策室」、または協会までご連絡ください。
                            (正司 光男)