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お知らせ 2020.03.30

建設業の残業制限

 いつから適用されるのか?罰則は?

 建設業に時間外労働の上限規制が適用されるのは、2024年4月1日以降です。
一般的な大企業の規制が始まるのは2019年4月(中小企業は2020年4月)からですが、建設業は適用業種から外されており、5年後の適用になります。

 上限規制は、災害の復旧や復興を目的とした事業を除き、建設業のすべての仕事が規制の対象です。特別な事情があって具体的に取り決めをしない限り、時間外労働は月45時間、年360時間以内に制限されます。

 参考:厚生労働省

 また、上限規制に反する行為があった場合、6か月以下の懲役あるいは30万円以下の罰金になる可能性があるため、実施される時期には注意が必要です。

 猶予期間が設けられた背景
 時間外労働の上限規制で猶予が認められたのは、建設業、医師、自動車運転業務など一部の業種のみです。建設業においては、業界として抱える問題が背景にあります。

 まず、建設業は長時間労働の傾向が高いことです。「毎月勤労統計調査」をもとに国土交通省で作成された資料によると、2016年度調査産業の年間実労働時間の平均が1720時間に対し、建設業では2056時間に上り、ほかの産業よりも336時間も多いことが分かります。
 さらに、建設業以外の産業は年々労働時間が減少傾向にありますが、建設業は長時間労働が常態化したまま。この状況で、ほかの産業と足並みを揃えて時間外労働の上限規制を受けるのには限界がありました。
 また、このほかにも週休二日の確保が難しく休日出勤が常態化していること、人手不足によりこれらの問題をすぐに解決できないことが、規制の猶予が適用される背景となっています。
 このように、規制がはじまるまで課題が山積みの建設業ですが、規制の引き延ばしを受けるものの実施が決まった以上は適応できるよう対処していくほかありません。
 
 建設業が猶予期間中に取り組めることとは
 建設業では、時間外労働の上限規制に猶予があるというのは前述のとおりですが、人手不足と長時間労働が常態化している現状を考えると、環境の整備には一刻の猶予もありません。

 そこで、建設業の現状を改善し、働き方改革を加速化させるために、国土交通省によって策定されたのが「建設業働き方改革加速化プログラム」です。

 プログラムでは、長時間労働の是正、給与・社会保険、生産性向上のための施策を展開しています。このプログラムを、企業あるいは個人事業主レベルで見たとき、どのような対策が可能か見ていきましょう。

 労働時間に関する取り組み

 建設業における適切な労働時間への取り組みは、週休二日の推進、適正な工期設定の推進のふたつです。プログラムは、公共工事から実施し、民間でのモデルケースを展開させる施策になります。

 週休二日の工事の増加、過密なスケジュールの減少が進み、モデルケースが増えれば、建設業全体で労働時間が改善されるしくみです。

 事業主側では無理のない範囲で実施しつつも、発注側・受注側どちらの立場になっても無理な工期で契約を進めず適正な範囲に収める努力が求められます。

 給与・社会保険に関する取り組み
 建設業の労働時間がほかの産業と比べて長いにもかかわらず、人手不足によってさらに悪循環となっている状態を改善するために設けられたのが、給与・社会保険に関する取り組みです。

 プログラムでは、働く人の待遇を直接改善することによって、建設業界の抱える慢性的な人手不足の解消を図ります。

 事業主側に求められるのは、労働者のスキルや経験を適正に評価し、待遇に反映させること。こうした中、広まりを見せているのが建設キャリアアップシステムです。

 これは、建設業界における人材を適切に評価するためのものです。技能者各々にICカードが配布され、職歴や仕事内容、資格、受講した講習が蓄積されていきます。事業主においては、運用の前向きな検討が必要となってくるでしょう。さらに、こうした仕組みをもとに賃金水準の見直しも必要です。

 そしてもうひとつ、事業主側に求められるのが、社会保険の加入です。建設業は個人経営や一人親方の場合も多く、社会保険の加入義務があるにもかかわらず、未加入になっているケースは少なくありません。

 今後、社会保険未加入であると工事施行の発注ができなくなるほか、建設業の更新もできなくなるため、加入義務があれば必ず社会保険に入ることが重要です。

 生産性を上げるための取り組み

 プログラムでは、ICT活用企業の支援、仕事効率化、人材活用の3つの観点から建設業の生産性の向上が図られます。

 特にICTの活用は事業主にとっても大きなポイントです。労務・施工管理のシステム化は、政府からの後押しを受けられるだけでなく、大幅な業務カットにつながります。その分、人材をほかに活かすことができるので生産性向上に大いに役立つことでしょう。

 また、プログラムでは、建設業におけるリカレント教育も推進されています。これは、技術などを学びなおすこと。限りある人材にリカレント教育を受けさせることで、今の人材を活かしつつ新しい技術にアップデートさせることができます。

 なかなか人が集まりにくく人手不足とされる建設業ですが、ICTの活用、今いる人材の活用によって生産性の向上は可能です。

まとめ
 働き方改革の波は、長時間労働が慢性化している建設業にまで押し寄せています。そうした中、時間外労働の上限規制については、5年の猶予が設けられることになりましたが、建設業界の抱える問題は深いです。(正司 光男)