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お知らせ 2020.02.10

賃金の請求権の時効が「3年」に

 時効「3年」が適用される賃金はいつのものから?
 賃金請求権の消滅時効が見直されることを受け、気になるのは「既に生じている未払賃金についても3年の時効が適用されるのか」という点ではないでしょうか?
 未払賃金問題はいずれの企業においても懸念すべき労務課題であり、労働時間制の運用誤りや勤怠管理の不徹底等から、事業主が意図せぬところで生じている可能性があります。

 また、働き方改革の一環として、目下、未払賃金問題の解消に取り組む企業も少なくないでしょう。
改正民法の施行に伴い、「2020年4月からは3年前までさかのぼって確認・清算すべし」では、労務管理上のさらなる混乱は避けられません。

 この点、公益委員の見解は、
「施行期日以後に賃金の支払期日が到来した賃金請求権の消滅時効期間について改正法を適用する」旨を明らかにしています。
 よって、2020年4月時点から将来に向かって生じる賃金について、3年の消滅時効が適用されることになる見込みです。

 年次有給休暇請求権の消滅時効は「2年」に据え置き
 消滅時効の見直しについては、賃金請求権の他、年次有給休暇請求権についても注目されていました。この点、年次有給休暇の請求権に係る消滅時効は現行の「2年」のままで落ち着きそうです。
 
その理由として、
・そもそも有休制度の趣旨は「労働者の健康確保及び心身の疲労回復」にあることか ら、消滅時効期間を現行より長くすると制度本来の趣旨に反するおそれがある
・2019年4月から年次有給休暇年5日取得が義務化され、法の下で取得促進が進めら れているところである 等が挙げられます。
 
 まとめ
 賃金請求権の消滅時効見直しについては、長年労使間の調整がつかぬままの状態が続き、実に2年越しのテーマとなって今日に至ります。
 このたび「原則5年、当面の間3年」とのことで概ねの決着がついたことは、大きな進展と言えるでしょう。

 こうした転機を迎え、現場においては、未払賃金を生じさせない労務管理体制作りはもちろん、これまでに生じた未払賃金の清算についても目を向けていく必要があることは言うまでもありません。 (正司 光男)