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お知らせ 2019.03.04

賃下げのルール

 賃下げのルール
 原則:合意があればOK
 賃金の減額は労働者の不利益になりますから、慎重に行わなければなりません。
まず、最低賃金を下回るなどの法律違反が無ければ、合意に基づく賃下げは合法です。
 賃下げをする場合には出来る限り合意を取り付けておくことがベストです。
 合意がない場合に違法となる場合
 合意がなければ即違法となるわけではありませんが、以下に違法となりうる例を列挙します。
•賃金制度の見直しによる減給
・仕事内容の変更や、新制度の格付け変更による賃金減額は違法とされる場合があります。
•年齢による賃金カット
・一定年齢以上になると賃金を一定割合カットするケースは少なくありませんが、同意なく一方的に行われる場合は違法となりえます。特に業務内容に変わりがないの に賃金カットを行うのは違法と判断されたケースがあります。
・定年後に再雇用する際に賃金減額について合意してもらうなど、合意を得るための手続きが必要となります。
 
 同意が無くとも合法となる場合
 以下の場合については、賃金の一部減額が社内制度上予定されており、基本的に合法と考えられます。
※ただし、個別具体的に確認する必要があるため一概に合法性を保障するものではありません。
•年俸制で、年俸額が業績と連動する制度となっている場合
・年俸額が業績と連動して変動する旨の規定があれば、あらかじめ増額や減額も見込まれているため合法となります。
•役職交代によって、役職手当が減額あるいはなくなる場合
・役職の交代などは使用者の裁量事項ですから、手当が減ったり無くなったりして基本的に合法です。
•職務給を採用している場合で、職務変更による職務給の減額があった場合
・職務に応じて職務給が減ることも当然あり、基本的に合法です。
 業績不振による賃金カットの手続き
 業績不振により賃金カットを行う場合には、一定の手続きを踏むことが求められます。
 まずは前述したように、労働者の同意を得られないかを検討します。
 同意を得る手続きには大きく二種類、(1)労働者個人の同意を得る(個別合意)、(2)労働組合の同意を得る(労働協約)があります。
 個別合意が得られやすいのなら個別合意をそれぞれ取り付け、それが難しければ組合との交渉を検討することになるでしょう。
 合意を取り付けることが難しいと判断される場合は、就業規則変更による減給を実施することになります。
 この場合、以下の事項に照らして合理的な変更である必要があります(労働契約法第10条)
 1.労働者の受ける不利益の程度
 2.労働条件の変更の必要性
 3.変更後の就業規則の内容の相当性
 4.労働組合等との交渉の状況
 5.その他の就業規則の変更に係る事情
 これらの条件を満たした適正な変更であれば、労働者の合意を得なくとも賃下げが実現されます。
 もちろん合意を取り付けておいたほうがトラブル防止の観点からも好ましいですから、就業規則変更による場合であっても可能であれば同意書などを取り付けておいたほうが良いです。
 就業規則変更の方法によるとしても、前述した合理性の判断基準に「労働組合等との交渉の状況」とあるように、社員への説明は必要となるでしょう。なぜ賃下げが必要なのかということを丁寧に説明しましょう。
 1.業績不振の理由
 2.賃下げせざるを得ない事情
 3.賃下げ以外に取り組んだこと(取り組んだがどうしても賃下げが必要ということを説明する)
 4.今後どのように業績不振を克服していくのか
 5.賃下げの期間や、どの程度業績が回復したら元に戻るのか・・・など
 就業規則や賃金規程に定めておきたいこと
業績不振の際に賃下げを実施しやすくするため、「業績不振等の理由により賃金を減額させることがある」といった規定をしておいたほうが良いでしょう。
※この規定がなくとも、賃下げの必要性があって正当な手続きを踏めば賃下げはできます。社内説明の際に根拠規定があると話しやすいということです。
 不明な点は、TEL 06-6541-8010正司まで  (正司 光男)