外国人の「特定技能」制度
外国人労働者の受け入れ拡大に向け、4月から導入される新しい在留資格「特定技能」について、法務省は企業などを対象にした地方説明会を始めた。全都道府県で開催する予定だが、受け入れに必要な書類や外国人の支援を担う「登録支援機関」の申請書などは「3月中に法務省のホームページに掲載予定」としている。企業や業界団体などから「情報が乏しく、受け入れの準備が進まない」と焦りの声が上がっている。
新制度は受け入れ企業などに仕事・生活両面の支援を義務付けている。登録支援機関は、単独で支援できない受け入れ先の委託に基づき、外国人を支援する。担い手として、業界団体や社会保険労務士などが想定されるが、外国語で対応可能な体制や外国人支援実績なども必要だ。新資格は技能実習生から無試験で移行できることもあり、法務省の担当者は「技能実習生の受け入れ実績がある監理団体からの申請が多いのでは」と言う。監理団体は実習生の受け入れ窓口となり、雇用する企業などを監督・指導する非営利団体だ。
しかし、その監理団体からは戸惑いの声が上がる。千葉市内のある監理団体は登録支援機関への申請を考えている。だが、団体の職員は「毎日、法務省のウェブサイトをチェックしているが、よく分からない。このままでは対応できない。早く具体的な情報がほしい」とため息をつく。茨城県内の監理団体の担当者も「準備しようにも、何をすればいいのか」と話す。
情報提供のため1月にウェブサイト「登録支援機関.com」を開設したJAPAN行政書士事務所(東京都台東区)の小山翔太所長も「4月スタートなのに、法務省の情報が少なすぎる」と指摘。このサイトの申請手続きを紹介するページは「準備中」のままだ。
法務省は6日、初の説明会を鳥取県倉吉市で開催し、8日には甲府市で開いた。いずれの会場でも、必要書類や受け入れにかかる期間など具体的な質問が相次いだ。個人で登録支援機関への申請を考えているという男性(46)は「質問しても『地方の労働局に問い合わせて』と言われた」と納得できない表情をみせた。特定技能者の雇用を検討する果樹園経営、斉藤国雄さん(54)は「情報が出るのが遅い。これから収穫期で人手が必要だが、今シーズンは間に合わなさそうだ」と話した。
法務省によると、特定技能の取得申請は4月1日から。受け入れ企業や登録支援機関の要件や手続きなどを定めた政省令も4月1日に施行される。
◇登録支援機関
4月に施行される改正入管法に基づき新たに設けられる機関。特定技能の外国人を雇用する受け入れ企業の委託を受け、入国前のガイダンスや住宅確保、生活相談などの支援を行う。新設される出入国在留管理庁の長官の登録を受ける必要がある。技能実習生を受け入れる監理団体と異なり、個人や営利企業も申請できる。支援の実施状況などを報告する義務があり、違反すれば登録を取り消されることもある。
(毎日新聞)