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お知らせ 2018.04.22

事業所が変わっても労働時間は通算されます

 短時問のパートを募集したところ、応募者は「別の会杜で、1週3日、6時間ずつ働いている」といいます。この場合、当社で働いた時間が1週40時間、1日8時間を超えなければ、時間外割増を支払わなくて構わないでしょうか。
 後から採用した企業に支払い責任
 パートで働く人の中にも、「本当はフルタイムで、お給料も高い職場で働きたい」と希望する人が少なからずいます。そういう人にとって、次善の選択は「ダブルワーク」ですが、採用する会社側は働きすぎを防止するため、キチンとした労務管理を心がける必要があります。
 労働基準法第38条第1項では、「事業場を異にする場合も、労働時間の適用に関する規定の適用については通算する」と定めています。ここで「事業場を異にする」とは、「事業主を異にする場合を含む」(昭23.5.14基発第769号)と解されて.います。
 2つ(以上)の事業主相互にはまったく資本・商業関係がなく、労働者本人の独自判断で複数の勤め先を確保する場合でも、労基法第38条は適用されます。お尋ねの場合は、まさにこのケースといえます。
 ですから、2つの事業場で働いた時間を「通算して」、1週40時間、1日8時間を超えたら、割増賃金の支払い義務が生じます。どちらの事業主が対象になるかといえば、「時間外労働についての法所定の手続を採り、割増賃金を負担しなければならないのは、通常は、時間的に後で労働契約を締結した事業主と解すべき」(労基法コンメンタール)とされています。
 後から契約する事業主は、「労働者が他の事業場で労働していることを知りながら、契約を締結する」立場にあるからです。
 ただし、「甲事業場で4時間、乙事業場で4時間働く場合、甲事業場の使用者が、労働者が乙事業場で四時間働くことを知りながら、労働時間を延長するときは、(契約の後先に関わらず)甲事業場の使用者が義務を負う」という結論となります。
 お尋ねのケースでいうと、労働者(Aさん)が他事業場(B事業場)で6時間働いた後、貴事業場(C事業場)で4時間働くときは、C事業場が2時間分の割増賃金を負担します。しかし、B事業場で1時間残業させたときは、「B事業場はC事業場で4時間働く(2時間法定内、2時間法定外)ことを知っていた」のであれば、その1時間分については割増賃金を支払わないといけません。
 一応、論理的には、すっきりと整理できます。しかし、AさんがB事業場にC事業場で働く旨、申告するのは現実的にいうと期待薄です。B事業場は、何の罪の意識もなく、割増を支払わず放置するという事態も予想されます。
 この場合でも、C事業場としては、B事業場での労働時間(残業時間を含む)を把握したうえでAさんを使用しないと、過重労働発生時等には貢任を問われかねないので、十分な注意が必要です。(正司 光男)